このページはこのような方を対象としています。
- 東急田園都市線高津駅に向かう電車内で痴漢をして、川崎市高津区溝口にある高津警察署で取り調べを受けて、釈放されました。後日、検察庁から呼び出しがあると言われました。被害者が被害届を出しているかはわかりません。私は起訴されてしまうのでしょうか。
- 1年前、小田急線伊勢原駅前で交通事故を起こしました。当時、伊勢原市田中にある伊勢原警察署で取り調べを受け、実況見分もしました。それから、何もなかったのですが、昨日、突然起訴状が自宅に届きました。弁護士を選任するように書いてありましたが、どうすれば良いのでしょうか。
- JR東海道線茅ヶ崎駅近くのコンビニで乾電池を万引きしました。茅ヶ崎市十間坂にある茅ヶ崎警察署で取り調べを受け、乾電池はコンビニから買い取りました。コンビニから被害届は出ているようですが、起訴されたくありません。どのようにすればよいでしょうか。
起訴とは
起訴(公訴提起)とは、検察官が、裁判所に対して、刑事裁判の開始を求める手続きのことです。
具体的には、横浜・神奈川の刑事事件の場合、横浜地検などの検察官が「起訴状」を横浜地裁などの裁判所に提出することにより行います。口頭での起訴は認められていません。重要な手続きなので、必ず書面で行うことになっているのです。
起訴されると、それまで「被疑者」と呼ばれていたものが、「被告人」となります。
起訴がなされると、起訴状の写しが被告人に送られます。もし、2か月間たっても起訴状が届けられない場合は、起訴はその効力を失います。被告人が、自分が起訴されたことをすぐに知ることのできるように配慮されているのです。
起訴できるのは検察官だけ!
日本で、ある事件について、起訴するかしないかの判断をすることができるのは、原則検察官だけとなっています。
刑事訴訟法第247条
公訴は、検察官がこれを行う。
起訴されれば、被告人は裁判に出廷しなければならず、有罪判決の危険にもさらされることになります。有罪となれば、前科が付き、場合によっては刑務所での生活が待っているかもしれません。
起訴されるかどうかは、被疑者にとって一大事なのです。
その決定権限を、日本の法律は、検察官だけに与えているのです。検察官のもつ権限は非常に強大です。
起訴する事件は明確に!
起訴については、いくつかの重要なルールがあります。そのうちの1つが、「訴因の明示」というものです。簡単に言えば、どのような事件について起訴がなされているのか、明確に示しましょう、ということです。もし不明確な記載がなされてしまうと、被告人は裁判の場でどのような主張を行えばよいのか分からなくなってしまいます。極端な例を挙げれば、殺人罪で起訴されたと思って「けがはさせたかもしれないけど、殺してはいない!」と主張し続けていたのに、実際には傷害罪(けがを負わせる犯罪)で起訴されていたため、被告人は充分な反論もできず有罪に…といったことが起こりかねません。
実際の事件では、覚せい剤等の薬物犯罪について大きな争いが生じ得ます。複数回の薬物使用がある場合、いつどこでの使用について起訴されたのか、ということが問題になるのです。
裁判官が予断を抱いてはダメ!
起訴に関しての重要なルールとして、「予断排除の原則」というものもあります。
これは、実際に裁判が始まるまでは、裁判官が「予断」を抱かないようにしなければならない、というものです。「予断」とは、あらかじめ「この被告人が有罪だな」とか「この被告人は無罪だな」「かなり怪しいな」といった考えを持ってしまうことです。
予断を抱いて裁判がスタートしてしまえば、到底公平な裁判は期待できません。非常に重要な原則です。
この原則を実現するために、起訴状には、検察官が持っている証拠に関する情報や、不要な前科情報を載せてはいけないということになっています。こうした情報が記載されてしまえば、それを読む裁判官としては、どうしても予断を抱いてしまう可能性があるためです。ある事件で“容疑者”が逮捕され、その人物についてのマスコミ報道が繰り返されると、視聴者の多くは、どうしてもその人物が“真犯人”であると思い込んでしまいがちです。これが「予断」です。ときに謝った判断につながりかねない、大変危険なものなのです。